「腰痛で夜眠れない」「寝返りのたびに痛みで目が覚める」――そんな経験はありませんか?実は腰痛と睡眠の質は密接に関係しており、悪い姿勢や寝具の影響で痛みが悪化するだけでなく、不眠が腰痛を慢性化させる要因にもなります。
この記事では、科学的根拠に基づいた腰痛と睡眠の関係性、改善のための具体的なポイント、正しい寝具や姿勢の選び方について解説します。
目次
腰痛と睡眠の関係
睡眠不足は自律神経のバランスを崩し、交感神経が優位となることで筋肉が過緊張状態を引き起こします。血管収縮により血流が悪化し、筋肉や組織への酸素や栄養の供給が滞り、老廃物も溜まりやすくなるため腰痛が悪化します。さらに、睡眠不足は痛みを感じやすくするブラジキニンの増加と、痛みを抑えるエンドルフィンの減少をもたらします。精神的ストレスも加わって腰痛が増悪しやすく、悪循環となるため、質の高い睡眠を確保することが重要です。
厚生労働省の調査によると、日本人の約8割が一生のうちに腰痛を経験するといわれています【厚生労働省「国民生活基礎調査」】。一方で、慢性的な腰痛を持つ人は、不眠症の有病率が高いことも報告されています【日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン2021」】。
つまり、腰痛と睡眠は「双方向的」に悪影響を及ぼし合っているのです。
腰痛があると眠れない理由
腰痛は睡眠の質に大きな影響を及ぼします。腰痛によって寝つきが悪くなり、夜中に何度も目覚めることで慢性的な睡眠不足に陥ります。睡眠不足は疲労や集中力低下だけでなく、免疫力の低下も招きます。特に睡眠中に分泌される成長ホルモンは組織修復に不可欠であり、睡眠不足になるとその分泌が阻害されて組織の回復が遅れることで腰痛の長期化を招きます。また、無意識のうちに取る寝姿勢が腰に負担をかけ、症状悪化の原因になることもあります。
寝返りがしやすい環境を作ることも大切
質の良い睡眠は深いノンレム睡眠時の成長ホルモン分泌を促進し、筋肉や骨、組織の修復を助けます。これにより腰痛の回復が期待できるほか、自律神経のバランスも整い筋肉の緊張が緩和、血流の改善をもたらします。安眠は痛みの感受性を下げ、ストレス軽減にもつながります。寝具や寝姿勢を見直して寝返りがしやすい環境を作ることも腰痛の軽減に役立ちます。
腰痛を和らげる寝具選びのポイント
マットレス
- 硬すぎるマットレス → 腰と肩が浮きやすく、背骨が不自然に曲がる
- 柔らかすぎるマットレス → 腰が沈み込みすぎて負担が集中する
中程度の硬さで体圧分散性が高いマットレスが推奨されています【日本整形外科学会ガイドライン2021】
枕
- 高すぎる枕は首や肩に負担をかけ、姿勢バランスを崩す
- 低めで頭と首を自然に支える枕が理想
腰痛改善につながる寝姿勢の工夫
- 仰向け寝:膝の下にクッションを入れると腰椎の反りが軽減
- 横向き寝:両膝の間に枕を挟むと骨盤と脊柱が安定
- うつ伏せ寝:腰椎に大きな負担がかかるため避ける
メンタルケア
不眠と腰痛の慢性化にはストレス・抑うつ・不安が関与します。認知行動療法(CBT-I)は、慢性腰痛患者の睡眠改善に有効とされています【Journal of Clinical Sleep Medicine, 2020】。
まとめ
- 腰痛と睡眠は切っても切れない関係にあり、質の高い眠りが腰痛改善のカギです。
- 腰痛で眠れない → 睡眠不足で痛みが悪化 → 慢性化
という悪循環を断ち切るためには、寝具・寝姿勢・生活習慣の見直しが不可欠です。
「腰痛だから眠れない」と諦めるのではなく、科学的根拠に基づいた方法で改善を目指しましょう。
引用元
- 厚生労働省「国民生活基礎調査」
- 日本整形外科学会「腰痛診療ガイドライン2021」
- Journal of Pain Research, 2018
- National Institutes of Health (NIH), 2017, 2019
- Journal of Clinical Sleep Medicine, 2020



